狂犬病予防法が制定される1950年以前、日本国内では多くの犬が狂犬病ウイルスに感染し、ヒトも狂犬病に感染し死亡していました。このような状況のなか狂犬病予防法が施行され、犬の登録や予防注射などが義務づけられることとなり、現在では犬なども含め日本国内における狂犬病の発症はありません。しかし、狂犬病は現在でも世界中で発生しており、その死者は年間約55,000人以上にのぼります。また、狂犬病に感染した動物などに咬まれるなどし、狂犬病感染の恐れがあることから暴露後ワクチンの接種(※1)を受けているヒトも年間で約1,500万人にもなります。
 このように、狂犬病は日本の周辺国を含む世界中のほとんどの地域で発生しており、日本は常に侵入の脅威にさらされていることから、万一に備えた対策が重要となっています。

◆そもそも狂犬病とは?

 狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染することで起こる病気で、感染した動物に咬まれたり、感染した動物の唾液とヒトの傷口などが接触することにより感染します。
 犬に咬まれて発症する症例が全体の9割以上を占めているとされますが、アライグマ、キツネ、コウモリなどの野生動物からの感染例も報告されています。また、台湾では2013年に52年ぶりに野生のイタチアナグマに狂犬病の発症が確認されため、狂犬病清浄地域から外れることとなり大きな衝撃を与えています。

◆狂犬病はどういう病気?

 感染後、症状が出るまでの潜伏期間は、犬が2週間から2カ月程度、ヒトは1カ月から3カ月程度とされており、初期症状としては、発熱、頭痛、悪寒、患部の痛みなどが見られ、発症後の有効な治療法は無く致死率は、ほぼ100%です。
 万が一、感染の恐れがある野生動物に咬まれるなどした場合は、患部を石けんと水で洗い流し直ちに医療機関(※2)を受診し、暴露後ワクチンを接種する必要があります。

◆狂犬病の予防方法は?

 ヒトにおける予防接種は、1度につき3回の接種(※3)が必要とされており、効果は3年程度持続します。
 犬については、年1回の予防接種が法律により義務づけられています。

◆予防注射をしないとどうなるの?

 これまで述べたとおり、狂犬病は非常に恐ろしい病気です。そのため、日本では法律により犬の登録や狂犬病の予防接種などを義務づけており、違反者には20万円以下の罰金(刑事罰)が科せられます。(※4)

【主な罰則規定】
①犬を取得した日(または生後90日を経過した日)から30日以内に、犬が所在する市町村に対し登録の申請をせず、鑑札を犬に着けなかった者
②登録した犬が死亡したとき、市町村に対し30日以内に届け出をしなかった者
③登録した犬の所在地が変更になったとき、30日以内に管轄する市町村に対し届け出しなかった者
④登録した犬についてその所有者が変更になったとき、30日以内に管轄する市町村に対し届け出しなかった新所有者
⑤所有する犬について狂犬病の予防接種を毎年1回受けさせず、または注射済票を着けなかった者

 

 狂犬病の予防接種は、犬の命はもちろん“ヒトの命”を守るために義務づけられているものです。
 飼い主一人一人が、狂犬病に関する正しい知識と、ペットの命を預かる自覚を持つことが重要です。

 

※1:狂犬病感染の恐れがある動物に咬まれるなどした後に接種するワクチンで、咬まれた日を最初に90日間で計6回程度の接種が必要です。費用は国によって異なりますが、日本では1回につき15,000円ほどです。
※2:最寄りの医療機関は、秋田赤十字病院予防接種センター(秋田市)です。
※3:1回目接種後、7日後に2回目、21~28日後に3回目のワクチン接種で完了。
※4:無届け飼育や咬傷事故などにより、警察へ通報され逮捕に至ったケースもあります。