第3回男の手仕事展
第3回男の手仕事展-津軽伝統組子師・齊藤正傳と刺しこぎん作家・田中敏昭-
開催期間 平成25年10月18日(金)~10月27日(日)
展示室にいると、お客様が喜んで観ているのが伝わってきます。出展者お二人の卓越した技に感嘆し感動して帰りますが、その技に驚くだけではない何かがあると思っていたところに、あるお客様が話してくれました。「齊藤さんの組子の細やかな細工ひとつひとつ、田中さんの刺すこぎんの一針一針は技術的な巧さはもちろんだが、それ以上に心がこもっている。だからこそ観る人の心を動かすのだ。」と。また別のお客様は「二人の作品は、別の会場でやった時も何度か観ているけれど、その会場によって作品の表情が全然違ってくる。良いものは何回観てもやっぱり良い。」と話され、当館での作品との新たな出会いに喜んで帰られました。
津軽伝統組子師 齊藤正傳(しょうでん)さん
齊藤さんは、弘前市高屋に「建具工芸齊藤」を開業し10年。中学を卒業後、住み込みで修業に入った建具店で36年働き、その建具店が後継者がいないことで廃業となり、一念発起し開業。現在は本業の建具職人として忙しい毎日を送るなか、建具の技術を一人でも多くの方に知ってもらいたいと、伝統的な組子の技術で行灯や衝立(ついたて)を制作する県内屈指の職人です。卓越した技をお持ちでいながら常に謙虚な姿勢に、私たちは心安らいで作品を観る機会を与えてもらい、伝統の技に触れることができます。
刺しこぎん作家 田中敏昭さん
田中さんは、在職当時から奥様がさすこぎんの魅力にみせられいつしか自分も刺すようになり、こぎんの伝統的な模様を大切にしつつ一目一目きっちり刺しながらも、作品づくりをとても楽しんでいる様子が伝わってきます。お客様に作品の説明をしている時の田中さんのお顔は作品への愛情にあふれていて「作品が素晴らしいからどうしても欲しい」とおっしゃる客様がいると、とっても嬉しそうな反面困ったような表情で照れ笑いされる姿が印象的です。勝手な印象ですが、田中さんご自身が認めたお客様でないと大切な作品はお譲りしないのでは…と思ってみています。
組子とこぎんの出会いでもありますが、やはりそこは齊藤さんと田中さんだからこその出会いであり「男の手仕事展」が第三回を迎えた縁でもあります。
何年か前、齊藤さんの作品「氷組」(写真左)を観て惚れ込んだ田中さんが「氷組にこぎんを刺させてもらえないか」とお願いしたのが二人の最初の出会いで、それでできあがったのが「温故知新」だそうです(写真下)。
人気のある作品で欲しいとおっしゃるお客様がたくさんいらっしゃるようです。
こちらも二人のコラボ作品のひとつ「行灯」。
女性のお客様に人気のある作品です。
齊藤さんの代表的な作品「組子細工の屏風」
見学にきた常盤小学校6年2組の子供たちに囲まれて、どうやって作っているのか子供たちも興味津々。
こぎんの田中さんも子供たちに囲まれていたのでのぞいてみると、
植木鉢に敷くネットとたこ糸を使って、よりわかりやすくこぎんの模様を子供たちに刺して見せていました。
初めて見るこぎんの体験に「やってみたい」と声が次々あがり、にわかにミニ体験コーナーとなりました。
器用さでは女の子…とは限らず、奇数の目を拾って規則的に刺していくこぎんは男の子の興味もひいたようで男の子に教えられながら、女の子が刺す場面もありました。
(後日放課後に男子3名女子2名でまた体験したいと寄ってくれるほどでした)
こぎんも組子も興味と好奇心いっぱいで、見学の時間が足りなくなり子供たちから担任の先生に「この人達を学校に呼んで(作りたい)!」という声があがるほどでした。
出展者お二人も「子供たちのおかげで久しぶりに楽しい良い経験ができた」と喜んでくださったひとときでした。
遠くは東通村からお越しくださったお客様も。
大勢のお客様に「男の手仕事」を楽しみ喜んでもらい、出展者の方にもお客様にもいろいろなご縁をいただいた企画展でした。ご来場くださった皆さまに感謝いたします。ありがとうございました。