今から30年以上前、ジュースやお酒、しょうゆなどの飲料品や調味料の多くは「びん」に入って売られており、これらの空きびんを酒屋や商店にもっていくとお金をもらうことが出来たのを覚えている方もいらっしゃると思います。
 高度経済成長時代の日本では、「びん」の需要が高まる中で”新びん”の生産が追い付かず、空きびんを回収・再利用することによりその需要を満たしていました。この空きびんの再利用は、今をさかのぼること約150年前、「びん」の国内生産が始まった明治初頭から続いており、現在でもリターナブルびんとして定着しています。

☆Reduce(リデュース)・・・ごみになるものを減らす。

 「びん」におけるリデュースは、最新技術により厚みを薄くし軽量化することによって大幅に進んでいます。
 ビールびんで約20%、牛乳びんに至っては約50%もの軽量化を達成しており、原料の節約のほか、製造や運搬に係る燃料やCO²の排出量の削減にもつながっています。
 ※エコマーク認定されている超軽量びんも生産されています。

 ☆Reuse(リユース)・・・ものをくりかえし使用する。

 明治の初め頃、海外から洋酒が輸入されるようになり、使い終わった空きびんを買い集めて売る商売が生まれました。これがリユースの始まりと言われており、日本における「びん」の歴史は、繰り返し使うリターナブルびんが原点とも言えます。
 代表的なものとして、ビールびんや一升びん、牛乳びんなどが挙げられますが、近年では消費者のライフスタイルや流通の変化などにより、繰り返し使われないびん(ワンウェイびん)も増えてきています。しかし環境問題が叫ばれる昨今、環境にやさしい容器として、その長所が見直され始めています。

〇リターナブルびんの長所

1)省資源・省エネルギー
 リターナブルびんは、何度も使える容器なので原料が節約できるうえに、製造にともなうエネルギーも削減できます。 
2)大気汚染物質の排出削減
 製造にともなうエネルギーを削減することにより、CO²などの排出量が削減されます。
3)廃棄物の削減
 リターナブルびんは、そのほとんどが廃棄物になりません。

 ◎マークについて

 一升びんは、日本酒、しょうゆ、お酢などの容器として利用されている、日本が誇る規格統一びんの元祖です。同じ規格のびんを様々な商品に利用することによって、リユースの効率が飛躍的に上昇します。
 この利点に着目した日本ガラスびん協会が規格統一したリターナブルびんを“Rびん”と言い、この“Rびん”についているマークが“マーク”です。
 空きびんの回収や再利用に関わる消費者や行政、事業者がリターナブルびんであることを識別しやすいように“マーク”がつけられています。

 リターナブルびんは、回収後、殺菌・洗浄され、再び中身を詰めて商品化されます。ガラスびんのまま再使用されるのでごみにならず、原料や生産エネルギーの節約にもなる、環境にやさしい容器として世界中で注目されており、海外では飲料容器などにリターナブルびんの使用を法律で義務づけている国もあります。
 日本でも、リターナブルびんの利用しやすさや、製造・輸送時における省資源・省エネルギー化のさらなる推進を目指した、超軽量リターナブルびんの開発も進められています。

☆Recycle(リサイクル)・・・資源として再び利用する。

 家庭から排出された空きびんや古くなったリターナブルびんは、カレット工場で細かく砕かれて、“新びん”の原料やその他の用途に再利用されます。

○ガラスびんが再生されるまで

【消費者】:空きびんを“無色”“茶色”“その他”の3種類に分別・排出します

【町】:収集した空きびんから異物を取り除き、色別に選別・保管します。

【カレット工場】:色分別された空きびんを細かく砕き、ガラスびんの原料となるカレットの状態に加工します。

 ①破砕:空きびんを細かくガラス片に砕く
 ②ラベル剥離:ガラス片についているラベルを剥がす
 ③水洗い:ガラス片についている汚れを洗浄
 ④磁気選別:磁気によりキャップや鉄類を除去
 ⑤風力選別:風力で紙片やビニールを除去
 ⑥手選別:人がチェックして異物を除去
 ⑦金属選別:細かい金属類を探知機で除去
 ⑧完成:カレット(ガラスびんの原料)の完成です

【ガラスびん工場】原料とカレットを使ってガラスびんを生産します。

 ①調合:“カレット”“けい砂”“石灰石”“ソーダ灰”をミキサーで混ぜ合わせます
 ②溶解:調合された原料は約1500℃の高温で溶解されガラスになります
 ③成形:溶けたガラスを金型に入れ成形します
 ④徐冷:ガラスびんは急激に冷やすと割れやすいため、少しずつ冷やします
 ⑤検査:強度や傷の有無を機械や人の目で検査します
 ⑥加工:印刷焼き付けやコーティングを行います
 ⑦完成:梱包され、各びん詰め工場へ出荷されます

 再生されたガラスびんは、ふたたび様々な商品の容器となって、消費者の元へ帰って来ます。また、カレットは、「びん」以外にも“住宅用断熱材”や“タイル”、“舗装道路”や“ガラス工芸品”などに幅広く利用されています。

☆びんの循環サイクルを守る3つのポイント

1)正しく分別すること。

 色別に分けることはもちろんですが、「びん」以外のものが混ざると、リサイクルに大きな支障をきたしたり、再生したガラスびんの強度や品質に大きく影響します。

 ○色分別
 ①無色透明なびん・・インスタントコーヒーやジャム、調味料などの容器
 ②茶色のびん・・・・ビールや日本酒などの容器
 ③その他のびん・・・ワインや焼酎などの容器

×混ぜてはいけないもの
①耐熱ガラス・・・調理器具・食器・哺乳びんなどに使用されており、通常のガラスびんより溶解温度が高いため、溶け残って「びん」の強度を低下させます。

②陶磁器・・・茶碗・湯飲み・コーヒーカップなどの陶磁器類は、熔解工程で溶けずにそのまま残り、周辺に歪みが生じるため「びん」の強度を弱めることになります。また、乳白色ガラスについてもカレットになると磁器との判別が困難になるので、絶対に混ぜないで下さい。

③ガラス食器・・・クリスタルガラス製のコップ・灰皿などは、ガラスびんとは組成が異なります。また、一般的なガラスコップもクリスタルガラスと判別が困難なため混ぜないで下さい。

④照明・・・建材用ガラス・・電球類にはフィラメントが混入するため、除去が非常に困難です。また、蛍光灯には水銀が含まれているため、飲食物にリサイクルされる原料に含まれることは好ましくありません。

⑤キャップ・・・金属キャップやアルミキャップ、プラスチック製のキャップやコルク栓などは、取り外して下さい。

⑥薬品びん・・・農薬や劇薬などが入っていた「びん」は、リサイクルの際に有毒ガスなどを発生させる可能性があるため危険です。(※飲み薬が入っていた「びん」は大丈夫です。)

 2)正しく排出すること

 リユースもリサイクルも出来る「びん」なので、正しいルートで排出することが大事です。

①資源ごみに出す・・・・・燃やせないごみに混ぜること無く、きちんと分別・洗浄して資源ごみとして出して下さい。
②集団回収に出す・・・・・PTAや子ども会などの団体が、保護者や地域住民・関係者などに呼びかけて資源回収を行っています。回収された「びん」は、業者に売ることによって収入となり、また町からも重量に応じて報奨金が支払われています。
③購入店に返却する・・・リターナブルびんの中には、購入店からデポジットされた保証金が返却される製品もあります。

3)リサイクル製品を利用すること

「びん」の循環サイクルを持続させるためにも、リサイクル製品を積極的に利用しましょう。

○エコロジーボトル:原料としてカレットを90%以上使用し製品化したものを言います。また、その他のカレット(無色や茶色以外)を90%以上使用したものを“スーパーエコロジーボトル”と言います。

※エコロジーボトルの強度は、カレットの使用率が100%であっても通常の「びん」と全く変わりません。

 

 ガラスびんの主成分は、地球の地殻を組成する成分とほぼ同じと言われており、100%天然素材から出来ています。だからこそ、地球にも人にもやさしく安心して使うことが出来るのです。
 地球の砂から生まれたガラスびんを再利用(使用)して、身近なところから“省エネ”や“脱炭素”などの地球環境の保護に取り組みましょう。