海洋汚染防止のため脱プラスチックに向けた取り組みが加速している今、ベトナム北部にある景勝地で、ユネスコの世界自然遺産にも登録されている「ハロン湾」では、風光明媚な湾内クルーズが人気ですが、押し寄せる観光客によるゴミのポイ捨て問題を解決するため、2019年9月より観光施設内における使い捨てプラスチック製品の使用や、観光クルーズ船内へのペットボトルの持ち込みが禁止になりました。
 ほかにも、サンフランシスコ国際空港におけるペットボトル飲料水の販売禁止、東京都や大手企業によるペットボトル飲料水の会議利用や社内販売の禁止など、ペットボトル削減への取り組みが世界中で進んでいます。

☆ペットボトルの誕生とリサイクルの歴史

 ペットボトル誕生の歴史は浅く、1960年代に米国において技術開発され、日本では1977年にしょうゆ容器として採用されたのが始まりです。その後、1982年には清涼飲料容器に、1985年には酒類容器に、2002年には乳飲料容器として利用されました。
 一方、ペットボトルリサイクルは、1990年代初頭から取り組まれ、1993年にペットボトルリサイクル推進協議会主導のもと本格的に始まりました。その後、1997年に容器包装リサイクル法が施行され、現在では消費者、自治体、事業者に対するリサイクルへの取り組みが義務づけられています。

☆そもそもペットボトルとは?

 ペットボトルの原料は、石油から作られる「ポリエチレンテレフタレート」と呼ばれる樹脂で、頭文字を取ってPET(ペット)ボトルと呼ばれています。
 ペットボトルの特徴としては、加工がしやすいことや透明性により中身が確認しやすく、衛生的であるなどのほか、その軽さや丈夫さなどによる輸送の容易さにより、爆発的に利用範囲が広がっていきました。反面、持ち運びの手軽さによる様々な場所でのポイ捨てや、その丈夫さ故に自然に帰らずに海洋汚染に繋がるなど、自然環境や野生動物保護の観点から深刻な問題となっています。

☆ペットボトルの3Rに関する取り組みについて

○Reduce:リデュース(ごみになるものを減らす)

 ペットボトルにおけるリデュースは、長年の研究と技術開発により15年程前に比べ1本あたりの重量が、500mℓ容器で20%以上、2ℓ容器で30%以上もの軽量化に成功していて、原材料の節約のほか輸送に係る環境負荷の低減も図られています。

○Reuse:リユース(ものをくりかえし使用する)

 日本においては、使用済みボトルに発生する傷やへこみなどの劣化、誤用による有害物質等の異物の付着問題などがあり、ペットボトルの再利用(リターナブルペットボトル)は過去現在ともに普及していません。
 一方、技術開発の進歩により、使用済みペットボトルを原料にペットボトルを再生する完全循環型のボトルtoボトルリサイクル(広義の意味でのリユース)が行われています。

○Recycle:リサイクル(資源として再び利用する)

 ペットボトルのリサイクルには2つのルートがあり、市町村が分別回収するものと事業者(スーパーやコンビニ、自動販売機脇のゴミ箱など)が分別回収するものがあります。これら2つの回収ルートを経たペットボトルの日本におけるリサイクル率は近年85%前後を推移しており、世界でもトップクラスとなっています。

○リサイクルの流れ
【消費者】
①分別排出・・・キャップやラベルを取り除いて、収集日に排出する
【市町村】
②分別収集・・・ごみ収集車により回収する
③選  別・・・手作業により異物を除去する
④圧縮梱包・・・1メートル四方に梱包(ベール加工)する
【事業者】
⑤解  俵・・・ベールを解体する
⑥選  別・・・機械により塩ビボトルやカラーボトルを除去する
⑦手 選 別・・・取り除けなかった異物を人の目でチェックし除去する
⑧粉  砕・・・ペットボトルを粉砕しフレーク状に加工する
⑨分離作業・・・風力や磁気により異物を分離する
⑩洗浄乾燥・・・フレークを水や薬品等により洗浄・乾燥する
⑪再商品化・・・フレークやペレット(フレークを加工したもの)を原料に、商品へ再生する

ペットボトルは、飲料用などに主に使われることから、無色透明で汚れにくく、劣化するまで使われることが少ないため、再生しやすい原料となっています。また、加工のしやすさから様々な製品に再生されます。

◆主なリサイクル製品
 ①ペットボトル・・・約26%
 ②トレイ・パック類・約48%(食品用トレイ、卵パック、ブリスターパックなど)
 ③繊維類・・・・・・約21%(スーツ、作業服、カーテン、テント、内装材など)
 ④成形品等・・・・・・約5%(文房具、園芸用品、配水管、ごみ袋、フィルムなど)

ペットボトルをリサイクルする際の注意点

①正しく分別すること

 ペットボトルのリサイクルマークはで、製品本体またはラベルについています。
 流通している商品の中には、無色透明なボトル(※1)で一見するとペットボトルに見えるものの、実はプラスチック製品(※2)というものもまれにあります。ですから分別 する際は、必ずペットボトルのリサイクルマークが付いていることを確認してくださ い。
 また、ペットボトルのキャップやラベルは、ペットボトル本体と違う素材(※3)で出来ているので、必ず取り除いてください。なお、キャップリングは無理に取り除かなくても結構です。 

※1:ごくまれに海外製のペットボトルで着色された製品もありますが、リサイクル出来ませんので取り除いてください。
※2:プラスチック製品のマーク
※3:キャップは主に、ポリプロピレン製で、ラベルは主に、ポリスチレンで作られています。キャップは硬さの違うプラスチック同士が密着する性質を利用して密封の材料として用いられています。

②きれいに洗って出すこと

 ペットボトルは、事業者によるリサイクル工程の中で水により洗浄されますが、飲み残しがあった場合、ペットボトル内部にカビが生えたり、悪臭により虫や小動物が集まるなどし、衛生面に問題が発生します。
 また、ペットボトルのリサイクルマークが付いた製品の中でも、油やソースなどが入っていた製品は、リサイクル工程における洗浄作業が難しいため、きれいに洗いきれないものは、燃やせないごみに出してください。

③異物は混入させないこと

 リサイクルの対象になるのは、きれいなペットボトルです。灰皿代わりに利用したり、薬品を入れるなど、本来の用途以外に利用されたペットボトルは、絶対に混ぜないでください。
 手作業で選別を行う作業員に危険が及ぶほか、再生利用される製品の安全性にも関わります。 

 軽くて丈夫な上に、衛生的で加工もしやすいペットボトルは、私たちの身の回りに溢れ、目に触れない日は無いほどに普及しています。
 あまりの便利さ故、安易に消費してきたペットボトルについて、その後に発生する環境負荷の低減や、資源保護を考慮しながら、正しいリサイクルに取り組みましょう。